会議の前や重要な場面で突然胸がドキドキして息苦しくなった経験はありませんか。動悸や息切れは多くの方が経験する症状です。
特にストレス社会といわれる現代では、女性の更年期世代(45〜60歳)を中心に動悸の訴えが増加傾向にあります。当院でも「突然胸がドキドキして不安になった」「息切れで夜中に目が覚めた」といった相談を頻繁にお受けしています。
今回は、動悸・息切れが起きた時に自宅でできる対処法から、根本的な改善につながる生活習慣の見直しまで、医学的根拠に基づいた安全で効果的な方法をご紹介します。ただし、症状が重篤な場合や頻繁に繰り返す場合は、適切な医療機関での相談が必要です。
動悸・息切れの主な原因
動悸とは心臓の鼓動を自分で感じる状態のことで、息切れは呼吸が苦しくなる症状です。これらの症状は単独で現れることもあれば、同時に起こることも珍しくありません。
動悸・息切れの原因は多岐にわたり、生理的なものから病的なものまで様々です。まずは主な原因を理解することで、適切な対処法を選択できるようになります。
ストレスと自律神経の乱れ
現代社会でよく見られる動悸の原因がストレスと自律神経の乱れです。交感神経が優位になると心拍数が増加し、動悸として感じられます。
当院の診療でも、仕事のプレッシャーや人間関係のストレスが引き金となって動悸を訴える方が非常に多くいらっしゃいます。特に責任のある立場の方や完璧主義の傾向がある方に多く見られる傾向があります。
ストレス要因 | 身体への影響 | 動悸の特徴 |
---|---|---|
仕事のプレッシャー | 交感神経優位状態 | 会議前や重要な決断時 |
人間関係の悩み | 慢性的な緊張状態 | 特定の人と会う前後 |
睡眠不足・過労 | 自律神経バランス失調 | 夜間や早朝の動悸 |
更年期や女性ホルモンの変化
女性の場合、更年期における女性ホルモンの急激な変化が動悸の大きな要因となります。エストロゲンの減少により自律神経が不安定になりやすくなります。
当院では40代後半から50代前半の女性の方々から「今まで感じたことのない動悸が突然起こる」「ホットフラッシュ(ほてり)と一緒に心臓がドキドキする」といった相談を多くお受けしています。
カフェインやアルコールの影響
日常的に摂取しているカフェインやアルコールも動悸の原因となることがあります。カフェインは心拍数を増加させ、アルコールは血管を拡張させることで動悸を誘発する可能性があります。
- コーヒー、紅茶、エナジードリンクの過剰摂取
- アルコールの大量摂取や急な断酒
- 栄養ドリンクに含まれる刺激成分
不整脈などの病気
ただの動悸と思っていたが改善せず、内科に受診したところ心臓の疾患が見つかるケースも多々あります。症状がしんどかったり、なかなか改善しない場合には、無理せず内科に相談してください。
動悸・息切れが起きた時の即効性のある対処法
動悸や息切れが突然起きた時は、まず落ち着いて安全な場所で休息を取ることが大切です。ここでは医学的に効果が認められている即効性のある対処法をご紹介します。
これらの方法は副交感神経を刺激してリラックス状態を作り出し、心拍数を正常に戻す効果があります。多くの医療機関で推奨されている安全性の高い方法です。
腹式呼吸法(深呼吸)
腹式呼吸は動悸・息切れに対する最も基本的で効果的な対処法です。副交感神経を刺激することで心拍数を落ち着かせ、リラックス効果をもたらします。
当院では皆様に以下の手順で腹式呼吸を実践していただいています。正しい方法で行うことで、症状の緩和が実感できる場合があります。
手順 | 方法 | 時間の目安 |
---|---|---|
準備 | 椅子に座るか仰向けに寝る | 30秒 |
吸気 | 鼻からゆっくり4秒かけて吸う | 4秒 |
保持 | 息を2秒間止める | 2秒 |
呼気 | 口から8秒かけてゆっくり吐く | 8秒 |
体勢を整えて安静にする
動悸が起きた時の体勢も重要なポイントです。心臓への負担を軽減し、血流を安定させる体勢を取ることで症状の改善を促します。
一般的に推奨されている安静時の体勢には以下のようなものがあります。症状の程度や場所に応じて選択してください。
- 椅子に深く座り、背もたれに体を預ける
- 横になれる場合は側臥位で膝を軽く曲げる
- 立っている場合は壁にもたれかかって体重を支える
- 肩の力を抜き、首回りの締め付けを緩める
ツボ押し
東洋医学に基づくツボ押しも動悸の対処法として効果的です。神門や内関といったツボは心拍を安定させ、精神を落ち着かせる効果があるとされています。ただし効果には個人差があります。
当院でも補完的な治療としてツボ押しをご紹介することがあります。他の治療と併用することで、より効果的な症状改善が期待できます。
ツボ名 | 位置 | 押し方 |
---|---|---|
神門(しんもん) | 手首内側、小指側の窪み | 親指で3秒間優しく圧迫 |
内関(ないかん) | 手首内側、中央から指2本分下 | 中指で円を描くように刺激 |
合谷(ごうこく) | 手の甲、親指と人差し指の間 | 反対の親指で5秒間圧迫 |
根本的な改善につながる生活習慣の見直し
即効性のある対処法も重要ですが、動悸・息切れの根本的な改善には日常生活の見直しが欠かせません。生活習慣を整えることで自律神経のバランスが改善し、症状の予防や軽減につながります。
当院では皆様の生活スタイルに合わせた実践的なアドバイスを心がけています。無理のない範囲で継続できる改善策を一緒に考えていきましょう。
睡眠の質向上と休息の確保
質の良い睡眠は自律神経を整える最も重要な要素の一つです。睡眠不足や不規則な睡眠パターンは交感神経を優位にし、動悸を起こしやすくします。
実際に、睡眠の質を改善することで動悸の頻度が大幅に減少した症例を多数経験しています。以下のポイントを意識して睡眠環境を整えてください。
- 就寝・起床時間を一定にして生活リズムを整える
- 就寝前2時間以内の食事やカフェイン摂取を避ける
- 寝室の温度・湿度を適切に保つ(過ごしやすい温度、湿度50〜60%)
- スマートフォンやパソコンのブルーライトを就寝1時間前から遮断する
- 入浴は就寝1〜2時間前に済ませる
カフェインとアルコールの適切な制限
カフェインとアルコールの摂取量をコントロールすることは、動悸の頻度と強さを大幅に軽減する効果があります。
当院では、摂取量の記録をつけていただき、症状との関連性を確認しながら段階的に減量していく方法をお勧めしています。
飲み物・食品 | カフェイン含有量 | 推奨制限量 |
---|---|---|
コーヒー(1杯150mL) | 約60〜90mg | 1日2杯まで |
紅茶(1杯150mL) | 約30〜70mg | 1日3杯まで |
エナジードリンク(1缶250mL) | 製品により大きく異なる | 週に2回まで |
アルコール | – | 20g/日 |
適度な運動
適度な有酸素運動は自律神経のバランスを整え、ストレス解消と心肺機能の向上をもたらします。ただし、激しい運動は逆に動悸を誘発する可能性があるため注意が必要です。
当院では皆様の体力レベルや生活スタイルに応じた運動プログラムをご提案しています。継続しやすい運動から始めることが成功の鍵となります。
- ウォーキング:1日30分程度の軽快な歩行
- 水泳:週2〜3回、30分程度の軽い泳ぎ
- ヨガ・ストレッチ:深い呼吸と合わせた緩やかな運動
- サイクリング:平地での軽いペダリング
心理的アプローチによるリラックス法
動悸・息切れの改善には心理的なアプローチも重要な役割を果たします。不安や恐怖心が症状を悪化させることがあるため、心を落ち着かせる技法を身につけることが大切です。
日々の診療でも、薬物療法と並行してリラクゼーション技法を取り入れることで、より効果的な治療成果を得ています。
筋弛緩法
筋弛緩法は筋肉の緊張と弛緩を意識的に行うことで、全身のリラックス状態を作り出す方法です。動悸の際の身体の緊張を効果的に解放できます。
当院でもこちらの手法によって実際に多くの方が効果を実感されています。
筋肉部位 | 緊張方法 | 時間配分 |
---|---|---|
肩・首 | 肩をすくめて首に力を入れる | 緊張5秒→弛緩15秒 |
腕・手 | 握りこぶしを作り腕に力を入れる | 緊張5秒→弛緩15秒 |
腹部 | 腹筋に力を入れてお腹を硬くする | 緊張5秒→弛緩15秒 |
足・太もも | 足先を上げ太ももに力を入れる | 緊張5秒→弛緩15秒 |
誘導イメージ法
誘導イメージ法は心地よいイメージを思い描くことで心拍を安定させ、不安を軽減する技法です。動悸の際の恐怖心を和らげる効果があります。自然の風景や安らぎを感じる場所を思い浮かべながら深呼吸を組み合わせる方法となります。
- 静かな海辺での波音と潮風を感じるイメージ
- 森林の中で木々のそよぎと鳥のさえずりを聞くイメージ
- 温かい日差しの下で芝生に横たわるイメージ
- 信頼できる人と一緒にいる安心感のイメージ
マインドフルネス瞑想
マインドフルネス瞑想は現在の瞬間に意識を向けることで、不安や動悸に対する過度な反応を抑制する効果があります。継続的な実践により症状の改善が見られる可能性があります。
- 1日5〜10分の短時間から始める
- 呼吸に意識を向け、雑念が浮かんでも判断せずに呼吸に戻る
- 身体の感覚や感情をありのままに観察する
- 動悸が起きても「今、動悸を感じている」と客観視する
病院受診が必要なケース
動悸・息切れの中には緊急性の高い疾患が原因の場合があります。適切な判断により、必要な時は迷わず医療機関を受診することが重要です。
実際に「救急車を呼ぶべきか迷った」「どの程度の症状なら病院に行けばいいのか分からない」といった相談は多く寄せられています。以下の基準を参考にしてください。
緊急受診が必要な危険信号
私たちは日頃から皆様に「迷った時は受診する」ことをお勧めしています。早期発見・早期治療により重篤な合併症を予防することができます。
以下の症状がある場合は、心筋梗塞や重篤な不整脈の可能性があるため、即座に救急車を呼びましょう。
症状分類 | 具体的な症状 |
---|---|
胸痛を伴う動悸 | 激しい胸の痛み、圧迫感 |
意識障害 | 失神、めまい、意識朦朧 |
呼吸困難 | 座っていても息苦しい |
冷汗・吐き気 | 動悸と同時に冷や汗、嘔吐 |
早めの受診を検討すべき症状
緊急性は低くても、以下の症状が続く場合には内科で一度相談してみることをお勧めします。
- 動悸が週に数回以上繰り返される
- 動悸の持続時間が徐々に長くなっている
- 日常生活に支障をきたすほどの不安感がある
- 睡眠中の動悸で目が覚めることが続く
- セルフケアを試しても症状が改善しない
当院では問診・診察・検査により、症状の原因を明確にして適切な治療方針を決定しています。不安な症状があれば、遠慮なくご相談ください。
医療機関での検査内容
病院では動悸・息切れの原因を特定するため、様々な検査が行われます。心電図、血液検査、胸部レントゲンなどの基本的な検査から開始されることが一般的です。
当院でも初診時には詳細な問診とともに必要な検査を実施し、皆様の不安を取り除けるよう努めています。
- 血液検査(甲状腺機能、電解質バランス等)
- 胸部レントゲン
- 安静時心電図
- ホルター心電図
- 心臓超音波(心エコー)
- 運動負荷試験(必要に応じて)
※当院ではホルター心電図・心エコー・運動負荷試験は実施できません。必要な場合には近隣の病院などに紹介させていただきます。
よくある質問と回答
Q1: 動悸が起きた時、薬を飲んだ方がいいですか?
動悸の際の薬の使用については、原因や症状の程度によって判断が分かれます。市販薬の自己判断での使用は避け、医師にご相談いただくことをお勧めいたします。
Q2: 運動中に動悸が起きた場合はどうすればいいですか?
運動中の動悸は一旦運動を中止し、安全な場所で休息を取ることが最優先です。通常の運動による心拍数増加とは異なる異常な動悸の場合は注意が必要です。
とはいえ運動中の動悸の多くは、運動強度が体力レベルを超えていることが原因です。段階的に運動強度を上げ、十分なウォーミングアップを行うことで予防できます。
Q3: 更年期の動悸と心疾患の動悸の違いは?
更年期の動悸は女性ホルモンの変動に伴う自律神経の乱れが主な原因で、ホットフラッシュやイライラなどの他の更年期症状と同時に現れることが特徴的です。
当院でも更年期世代の方々から多くの相談をお受けしていますが、心疾患や肺疾患による動悸との鑑別には各種検査が必要です。気になる症状があれば、遠慮なく受診してください。
Q4: 夜間の動悸で眠れない時の対処法は?
夜間の動悸は不安を増強させやすく、さらに眠れないことでストレスが蓄積する悪循環を招きます。まず照明を暗くし、腹式呼吸や筋弛緩法を実践してください。
当院では夜間の動悸を訴える方々に対して、睡眠環境の改善と就寝前のリラクゼーション技法をお勧めしています。症状が続く場合は、睡眠障害の専門的な治療が必要な場合もあります。
Q5: 動悸の予防のために普段気をつけることは?
動悸の予防には規則正しい生活リズムの確保が最も重要です。十分な睡眠、適度な運動、バランスの取れた食事を心がけてください。ストレス管理の技法を身につけることもお勧めです。定期的なリラクゼーション技法の実践により、動悸の頻度と強度を大幅に軽減できる場合があります。
まとめ
動悸・息切れは多くの方が経験する症状で、適切な対処法を身につけることで症状の改善と予防が可能です。腹式呼吸やツボ押しなどの即効性のある対処法から、生活習慣の改善による根本的な解決まで、段階的なアプローチが効果的です。
特に重要なのは、症状に対する過度な不安を持たず、冷静に対処することです。多くの動悸は生命に危険のないものですが、危険信号を見極めて適切なタイミングで医療機関を受診することも大切です。
日常生活でできるセルフケアを継続的に実践し、必要に応じて専門医のサポートを受けながら、動悸・息切れと上手に付き合っていきましょう。症状が気になる場合は、一人で悩まずに医療機関にご相談ください。
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