健康診断で「血糖値が高い」「糖尿病の疑いがある」と言われて、不安を感じていませんか。多くの方が「自分の力で改善したい」と考えられることは自然な気持ちです。
2型糖尿病は、適切な食事療法と運動療法により、血糖値コントロールの改善が期待できる疾患です。完全な「治癒」は困難でも、生活習慣改善によって症状の進行を抑制し、健康的な生活を維持することは十分に現実的な目標といえます。
この記事では、内科医師として多くの糖尿病の方々を診察してきた経験をもとに、自力でできる血糖値管理の具体的な方法と実例をご紹介します。安全で効果的な改善方法を一緒に学んでいきましょう。
糖尿病の「自力改善」とは何か?
糖尿病の改善について語る前に、まず「自力で改善する」という言葉の意味を正しく理解することが重要です。多くの方が抱く誤解を解き、現実的な目標設定を行うことから始めましょう。
「コントロール」が現実的な目標
2型糖尿病は生活習慣病であり、一度発症すると完全に「治る」病気とは言いにくい病気です。ただし、発症早期から生活習慣の改善や適切な治療を行うことで、血糖値が正常化し「寛解」と呼ばれる状態を目指せる場合もあります。また、適切な管理により症状の進行を抑制し、合併症の予防が可能です。
「自力改善」とは、医師の指導のもとで生活習慣の見直し(食事療法・運動療法)を主体に行い、可能な範囲で薬を用いずに血糖値を正常範囲に近づけ、維持していくことを指します。これは決して不可能な目標ではなく、多くの方が実現されている現実的なアプローチです。
血糖値の基準値
血糖値管理の目標を設定するために、まず正常値と糖尿病の診断基準を理解しましょう。
| 検査項目 | 正常値 | 糖尿病型 |
|---|---|---|
| 空腹時血糖値 | 110mg/dL未満 | 126mg/dL以上 |
| 75gOGTT 2時間値 | 140mg/dL未満 | 200mg/dL以上 |
| HbA1c | 6.2%未満 | 6.5%以上 |
| 随時血糖値 | – | 200mg/dL以上 |
特に重要な指標がHbA1c(ヘモグロビンA1c)です。これは過去1〜2か月の平均血糖値を反映し、日本糖尿病学会では7.0%未満を血糖コントロール目標としています。
※HbA1c 6.5%以上が糖尿病型とされます。一般に5.6%未満が正常域、6.0〜6.4%は糖尿病予備群とされますが、基準値の範囲は検査機関によって多少異なります。日本糖尿病学会では、合併症予防のための一般的な血糖コントロール目標としてHbA1c 7.0%未満を推奨しており、年齢や合併症などに応じて個別に目標を設定します。
1型糖尿病と2型糖尿病の違い
自力改善が可能なのは主に2型糖尿病です。1型糖尿病は自己免疫疾患によりインスリンを分泌する細胞が破壊されるため、インスリン注射による治療が必要です。
2型糖尿病は全糖尿病の約90〜95%を占め、主に生活習慣が原因となって発症します。インスリンの働きが悪くなる「インスリン抵抗性」や、インスリンの分泌量が減少することで血糖値が上昇するメカニズムです。
食事療法による血糖値コントロールの実践方法
糖尿病改善の基盤となるのが食事療法です。「何を食べてはいけない」という制限的な考え方ではなく、「血糖値を安定させる食べ方」を身につけることが重要です。
炭水化物のコントロール
血糖値に最も大きな影響を与えるのが炭水化物の摂取量とタイミングです。完全に制限する必要はありませんが、量と質を意識した選択が必要です。
炭水化物コントロールの基本は、1食あたりの炭水化物量を40〜60gに調整することです。これは茶碗軽く1杯のご飯(約150g)に相当する量で、無理なく継続できる現実的な目標といえます。
| 主食の種類 | 炭水化物量(調理後100g当たり) | 血糖値への影響 |
|---|---|---|
| 白米 | 約35〜37g | 血糖値上昇が速い |
| 玄米 | 約32〜35g | 血糖値上昇が緩やか |
| 全粒粉パン | 約40〜45g | 血糖値上昇が緩やか |
| 食パン | 約42〜47g | 血糖値上昇が速い |
血糖値スパイクを防ぐ食事の順序
食事の順序を変えるだけで、血糖値の急激な上昇(血糖値スパイク)を効果的に予防できます。これは「ベジファースト」として知られる方法で、食後血糖の上昇を緩やかにする効果が研究結果として報告されています。
推奨される食事の順序は以下の通りです。
- 野菜・きのこ・海藻類から食べ始める
- 次に肉・魚・卵などの蛋白質を摂取
- 最後にご飯・パンなどの炭水化物を摂取
この順序で食事をすることで、食物繊維が糖の吸収を穏やかにし、血糖値の急上昇を抑制できます。
満腹感を高める食材選び
過度な食事制限によるストレスは血糖値コントロールに悪影響を及ぼす可能性があるため、満腹感を得られる食材選びが重要です。蛋白質と食物繊維を豊富に含む食材は、満腹感を持続させる効果があります。
満腹感を高める食材として以下がおすすめです。
- 卵料理(ゆで卵、スクランブルエッグなど)
- 鶏胸肉、鮭、サバなどの良質な蛋白質
- アボカド、ナッツ類(適量)
- キャベツ、ブロッコリーなどの食物繊維豊富な野菜
運動療法で血糖値を改善する方法
運動療法は食事療法と並んで糖尿病改善の両輪となる重要な要素です。特に有酸素運動と筋力トレーニングの組み合わせが、インスリン抵抗性の改善に効果的であることが多くの研究で示されています。
有酸素運動の推奨量
日本糖尿病学会では週150分以上(運動しない日が2日以上続かないように)の中等度〜強度の有酸素運動を推奨しています。これは1日約20分の運動を週7日、または30分の運動を週5日行うことに相当します。
当院では運動初心者の方々に対して、まず週3回30分のウォーキングから始めることを提案しています。中等度の運動強度とは、軽く息が上がる程度で、会話ができる範囲での運動です。
| 運動の種類 | 血糖値改善効果 |
|---|---|
| ウォーキング | 継続的な血糖値低下 |
| 水中ウォーキング | 関節負担少なく効果的 |
| 踏み台昇降運動 | 自宅で手軽に実施可能 |
| サイクリング | 楽しみながら継続可能 |
筋トレ効果で基礎代謝を向上させる
筋力トレーニングは基礎代謝の向上とインスリン感受性の改善に直接的な効果があります。特に大きな筋肉群を鍛えることで、効率的に血糖値コントロールの改善が期待できます。
「7秒スクワット」として知られる方法は、短時間で効果的な筋トレとして注目されています。7秒かけてゆっくりとスクワットを行うことで、筋肉に十分な刺激を与えることができます。
初心者向けの筋トレメニューをご紹介します。
- スクワット:10回×3セット(7秒かけてゆっくり行う)
- 腕立て伏せ(膝つきでも可):5〜10回×2セット
- プランク:30秒×2セット
- かかと上げ:20回×2セット
運動のタイミング
運動を行うタイミングによって、血糖値への効果が大きく変わります。特に食後の運動は、食事によって上昇した血糖値を効果的に下げる効果があります。
当院で推奨している運動のタイミングは、食後30分〜2時間以内、とくに食後1時間前後を目安としています。この時間帯に軽い運動を行うことで、食後の血糖値スパイクを抑制し、より良好な血糖値コントロールが可能になります。
実例で学ぶ糖尿病改善の成功パターン
理論だけでなく、実際に血糖値改善に成功された方々の事例をご紹介します。これらの実例から、持続可能な改善方法のヒントを学んでいきましょう。
40代男性の3か月間改善プログラム
40代男性のAさんは、健康診断でHbA1c 8.0%を指摘され、薬に頼らない改善を希望されました。当院で指導した運動療法および食事療法により、HbA1c 6.7%まで改善されました。
Aさんが実践した具体的な方法は以下の通りです。
| 改善項目 | 実践内容 | 継続のコツ |
|---|---|---|
| 食事管理 | 夕食の主食を半量に減らし、野菜を倍増 | 好きなおかずは制限せず満足感を保つ |
| 運動習慣 | 毎日30分のウォーキング | 通勤時に一駅歩くことで習慣化 |
| 体重管理 | 月2kgペースの減量 | 無理な制限はせず長期視点で取り組み |
Aさんの成功要因は、完璧を求めずに継続可能な範囲で改善を積み重ねたことです。週に1〜2回は好きな食事を楽しみ、ストレスを溜めないよう工夫されていました。
50代女性の食事改善による血糖値安定化
50代女性のBさんは、更年期とともに血糖値が上昇し、HbA1c 7.8%となりました。運動が苦手なBさんには、主に食事療法を中心とした改善プログラムを提案し、6か月でHbA1c 6.8%まで改善されました。
Bさんが重点的に取り組んだ食事管理のポイントをご紹介します。
- 白米から玄米への段階的な切り替え
- 間食を果物やナッツに変更
- 食事の最初に必ず野菜サラダを摂取
- 蛋白質摂取量を意識的に増加(1食20g以上)
Bさんの場合、運動は軽い踏み台昇降運動を1日10分程度に留め、主に食事管理で血糖値改善を達成されました。これは体力や時間の制約がある方にとって参考になる事例です。
長期継続のための心構え
糖尿病改善で最も重要なのは長期継続です。短期間の厳しい制限よりも、生活に無理なく取り入れられる方法を見つけることが成功の鍵となります。
私たちが指導している継続のコツは、「60点主義」です。完璧を目指さず、6割程度の実行率で十分効果が得られることを理解し、自分を責めすぎないことが重要です。
安全で効果的な改善プログラムの組み立て方
自力で糖尿病改善に取り組む際には、安全性を最優先に考えた計画的なアプローチが必要です。医師としての立場から、安全で効果的な改善プログラムの組み立て方をお伝えします。
改善プログラム開始前の必須チェック項目
自己流の改善プログラムは危険を伴う可能性があるため、開始前には必ず医師との相談が必要です。特に既に糖尿病薬を服用中の方や、他の疾患をお持ちの方は注意が必要です。
改善プログラム開始前に確認すべき項目は以下の通りです。
- 現在の血糖値レベルと合併症の有無
- 服用中の薬剤との相互作用
- 運動制限の有無(心疾患、関節疾患など)
- 低血糖のリスクと対処方法の理解
当院では、改善プログラムを開始される方々に対して、必ず血液検査と問診を実施し、個別の状況に応じたプログラムを提案しています。
段階的な目標設定
急激な生活習慣の変更は継続困難であり、かえって挫折の原因となります。段階的に目標を設定し、無理のない範囲で進行することが重要です。
| 期間 | 目標設定 | 主な取り組み |
|---|---|---|
| 第1か月 | 生活習慣の記録と把握 | 食事記録、血糖値測定の習慣化 |
| 第2〜3か月 | 食事改善の導入 | 主食量調整、食事順序の実践 |
| 第4〜6か月 | 運動習慣の確立 | 有酸素運動と筋トレの組み合わせ |
この段階的アプローチにより、生活習慣の変化に体が適応し、無理なく改善を継続できます。私たちの経験では、最初の3か月が最も重要な期間であり、この期間を乗り越えられれば長期継続の可能性が大幅に高まります。
定期的なフォローアップ
改善プログラムは一度設定したら終わりではなく、定期的な見直しと調整が必要です。血糖値の変化、体重の推移、生活環境の変化に応じて、プログラムを柔軟に調整することが成功の秘訣です。特に季節の変化や仕事の環境変化は血糖値に大きな影響を与えるため、定期的に内科を受診し医師に相談することが重要です。
よくある質問と回答
Q1: 糖尿病の薬を服用中ですが、自力改善を目指しても大丈夫でしょうか?
A1: 薬物治療中の方が自力改善に取り組む際は、必ず主治医との相談が必要です。急激な生活習慣の変更により低血糖を起こすリスクがあるため、医師の指導のもとで段階的に薬剤の調整を行いながら進めることが安全です。当院でも、薬物治療と生活習慣改善を並行して行い、症状の改善に応じて薬剤を減量していくケースがあります。
Q2: 仕事が忙しくて運動する時間がありません。食事だけでも改善できますか?
A2: 食事療法だけでも一定の改善効果は期待できますが、運動療法との組み合わせの方がより効果的です。時間がない場合は、通勤時の階段利用や一駅歩く、デスクワーク中の軽いストレッチなど、日常生活に運動を取り入れる工夫をお勧めします。最初は1日10分の軽い運動から始めても十分効果があります。
Q3: どのくらいの期間で血糖値の改善効果が現れますか?
A3: 個人差がありますが、適切な食事療法と運動療法を実践した場合、2〜3か月で血糖値の改善傾向が見られることが多いです。HbA1cは過去1〜2か月の平均血糖値を反映するため、改善効果の判定には最低2か月程度の継続が必要です。当院の症例では、3か月継続された方の多くでHbA1cの改善が確認されています。
Q4: 空腹感が強くて食事制限が続きません。良い対策はありますか?
A4: 空腹感対策として、食物繊維豊富な野菜や蛋白質を積極的に摂取することをお勧めします。これらの栄養素は満腹感を持続させる効果があります。また、一度に大量に食べるのではなく、1日5〜6回の少量多食にすることで空腹感を軽減できます。水分補給も重要で、食前にコップ1杯の水を飲むことで満腹感を得やすくなります。
まとめ
糖尿病の自力改善は、適切な知識と方法により十分に実現可能です。完全な治癒ではなく、良好な血糖値コントロールを目標とした現実的なアプローチが重要であることをお伝えしました。
食事療法では炭水化物のコントロールと食事順序の工夫、運動療法では有酸素運動と筋力トレーニングの組み合わせが効果的です。実例からも分かるように、無理のない範囲での継続的な取り組みが成功の鍵となります。
最も大切なのは安全性を最優先とし、医師の指導のもとで段階的に改善プログラムを実践することです。一人で抱え込まずに、医療機関に相談しながら健康的な生活を目指していきましょう。
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