健康診断や人間ドックで「脂質異常症の疑い」と指摘されたとき、多くの方が「いったい何科を受診すればいいの?」と迷われます。自覚症状がないため、そのまま放置してしまう方も少なくありません。
脂質異常症は放置すると動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中といった重大な病気を引き起こすリスクが高まります。早期の適切な治療により、これらのリスクを大幅に軽減できるため、正しい診療科選びと早めの受診が重要です。
この記事では、医師として多くの脂質異常症の方を診察してきた経験を基に、受診すべき診療科や実際の診察の流れについて詳しく解説いたします。
脂質異常症とは?基本的な知識と診断基準
脂質異常症について正しく理解することで、適切な診療科選びにつながります。まずは脂質異常症の基本的な定義と種類について確認しましょう。
脂質異常症とは、血液中の脂質(コレステロールや中性脂肪)の濃度が正常範囲を外れた状態を指します。以前は「高脂血症」と呼ばれていましたが、善玉コレステロール(HDLコレステロール)が低い場合も含むため、現在は脂質異常症という名称が使われています。
脂質異常症の診断基準値
日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」では、以下の基準値が設定されています。
項目 | 診断基準値 | 病名 |
---|---|---|
LDLコレステロール | 140mg/dL以上 | 高LDLコレステロール血症 |
HDLコレステロール | 40mg/dL未満 | 低HDLコレステロール血症 |
中性脂肪(トリグリセリド) | 150mg/dL以上 | 高トリグリセリド血症 |
健康診断の結果がこれらの基準値に該当する場合は、速やかに医療機関での精密検査を受けることが大切です。
脂質異常症の種類と特徴
脂質異常症は大きく3つのタイプに分類されます。それぞれの特徴を理解することで、治療の方向性も見えてきます。
- 高LDLコレステロール血症:悪玉コレステロールが高い状態で、動脈硬化の最大のリスク因子
- 低HDLコレステロール血症:善玉コレステロールが低い状態で、動脈硬化を防ぐ力が弱くなる
- 高トリグリセリド血症:中性脂肪が高い状態で、異常な高値となると膵炎のリスクも上がる
これらの異常は単独で起こることもあれば、複数が同時に認められることもあります。どのタイプかによって治療方針が変わるため、正確な診断が重要です。
脂質異常症は何科を受診するべき?診療科別の特徴を解説
脂質異常症の診療科選びで最も重要なのは、適切な診断と継続的な管理ができる科を選ぶことです。ここでは、主要な診療科の特徴をご紹介します。
脂質異常症は主に「内科」「循環器内科」「内分泌代謝内科」で診療可能です。それぞれの特徴を理解して、皆様の状況に最適な選択をしましょう。
内科(一般内科)での受診
内科は脂質異常症の診療において最も身近で利用しやすい選択肢です。多くのクリニックや病院で対応可能で、継続的な管理に適しています。
メリット | 注意点 | こんな方におすすめ |
---|---|---|
・アクセスが良い ・待ち時間が比較的短い ・他の生活習慣病も同時に管理 | ・専門的な検査に限界がある場合 ・重症例では紹介となる可能性 | ・軽度〜中等度の脂質異常症 ・定期的な通院が必要な方 |
当院でも多くの脂質異常症の方を診察していますが、適切な血液検査と生活指導により、大多数の方で数値の改善が見られています。
循環器内科での受診
循環器内科は心臓や血管の専門科として、脂質異常症による動脈硬化リスクの評価に優れています。特に心疾患の既往がある方や家族歴がある方におすすめです。
- 専門的な心血管リスク評価:動脈硬化の進行度を詳細に検査
- 合併症の早期発見:心エコー検査による心臓の評価
内分泌代謝内科・糖尿病内科での受診
内分泌代謝内科や糖尿病内科は、脂質異常症の根本的な原因となる代謝異常の診断・治療を専門とします。糖尿病や甲状腺疾患を合併している場合に特に適しています。
医療機関の選び方とチェックポイント
脂質異常症の治療は長期間にわたることが多いため、継続して通いやすい医療機関を選ぶことが重要です。以下のポイントを参考に、最適な医療機関を見つけてください。
医療機関選びでは、専門性だけでなく通いやすさや治療方針なども考慮する必要があります。
アクセスと通院の利便性
脂質異常症の治療では定期的な血液検査や診察が必要となるため、通院の利便性は治療継続の重要な要素です。
チェック項目 | 確認ポイント |
---|---|
立地・交通アクセス | 自宅や職場からの距離、公共交通機関の利用しやすさ |
診療時間 | 平日の診療時間、土日祝日の対応、夜間診療の有無 |
予約システム | Web予約の可否、待ち時間の短縮システム |
駐車場 | 駐車場の有無、料金、台数 |
医療機関の専門性と設備
脂質異常症の適切な診療には、血液検査設備や必要に応じた専門医への紹介が不可欠です。以下の点を確認しましょう。
- 院内検査設備:どのような検査が可能か
- 他科との連携:必要時の専門医紹介体制
治療方針と患者対応
脂質異常症の治療では、薬物療法だけでなく生活習慣の改善が重要な役割を果たします。患者一人ひとりに合わせた丁寧な指導ができる医療機関を選びましょう。
治療までの流れと診断項目
脂質異常症の診療がどのように進むのか、実際の流れを具体的な事例とともにご紹介します。初めて受診される方の不安を解消し、スムーズな治療開始につなげましょう。
当院での実際の症例を基に、典型的な診療の流れをご説明いたします。
脂質異常症の診療の流れ
問診、診察、血液検査を通じて総合的な評価を行います。
内容 | 詳細 |
---|---|
問診入力 | 基本情報、症状、既往歴などの入力 |
診察 | 医師による詳細な診察 |
血液検査 | 脂質項目を含む血液検査の実施 |
結果説明・指導 | 検査結果の説明と初期指導 |
受診前の準備として、健康診断の結果、現在服用中の薬の情報、家族歴に関する情報をまとめておくとスムーズです。
40代男性Aさんのケース
健康診断でLDLコレステロール180mg/dLと指摘された40代の営業職男性Aさんの事例をご紹介します。無症状でしたが、当院にご相談いただきました。
- 初回受診時:詳細な血液検査でLDL180mg/dL、HDL35mg/dL、中性脂肪220mg/dLと複数の異常を確認
- 治療方針:まず3ヶ月間の生活習慣改善(食事指導・運動指導)を実施
- 3ヶ月後:LDL160mg/dLと改善したものの目標値には届かず、薬物療法を開始
- 6ヶ月後:LDL110mg/dL、HDL45mg/dL、中性脂肪150mg/dLと大幅に改善
Aさんのケースでは、生活習慣改善と薬物療法の組み合わせにより、心血管リスクを大幅に軽減することができました。
血液検査の詳細項目と意味
脂質異常症の診断では、単純な総コレステロールだけでなく、複数の項目を総合的に評価します。
検査項目 | 基準値 | 臨床的意義 |
---|---|---|
LDLコレステロール | 120mg/dL未満 | 動脈硬化の主要原因、治療の最重要指標 |
HDLコレステロール | 40mg/dL以上 | 動脈硬化を防ぐ善玉、高いほど良い |
中性脂肪 | 150mg/dL未満 | 膵炎リスク、他の脂質に影響 |
non-HDLコレステロール | 150mg/dL未満 | 動脈硬化リスクの総合指標 |
治療方法と継続管理のポイント
脂質異常症の治療は生活習慣改善と薬物療法の2つの柱で構成されます。患者さん一人ひとりの状態に応じて最適な治療方針を決定し、継続的な管理を行うことが重要です。
治療の成功には患者さんの理解と協力が不可欠であり、医療機関との良好なコミュニケーションが治療効果を大きく左右します。
生活習慣改善による治療
軽度から中等度の脂質異常症では、生活習慣改善のみで目標値達成が可能な場合があります。食事療法と運動療法が基本となります。
- 食事療法:飽和脂肪酸の制限、食物繊維の積極的摂取、適正カロリーの維持
- 運動療法:有酸素運動を中心とした週150分以上の運動
- 体重管理:適正体重の維持(BMI25未満)
- 禁煙:喫煙は動脈硬化を促進するため完全禁煙が必要
薬物療法の選択肢
生活習慣改善だけでは目標値に達しない場合や、動脈硬化性疾患のリスクが高い場合には薬物療法を開始します。
薬剤分類 | 主な作用 | 適応 |
---|---|---|
スタチン系 | コレステロール合成阻害 | 多くの高LDLコレステロール血症で第一選択 |
エゼチミブ | コレステロール吸収阻害 | スタチンとの併用で効果増強 |
フィブラート系 | 中性脂肪低下 | 高トリグリセリド血症 |
EPA製剤 | 中性脂肪低下、抗炎症作用 | 高トリグリセリド血症、心血管疾患予防 |
定期的なフォローアップの重要性
脂質異常症の治療では定期的な検査と評価により、治療効果の確認と副作用のチェックを行います。
よくある質問と回答
脂質異常症の診療において、患者さんからよく寄せられる質問にお答えします。これらの疑問を解決することで、より安心して治療に取り組んでいただけるでしょう。
Q1. 自覚症状がないのに治療は本当に必要ですか?
A. はい、自覚症状がなくても治療は必要です。脂質異常症は「サイレントキラー」と呼ばれ、症状がないまま動脈硬化が進行します。無症状の段階で治療を開始することで、将来の心筋梗塞や脳卒中の発症を抑制することができます。
Q2. 薬を飲み始めたら一生やめられないのでしょうか?
A. 必ずしもそうではありません。生活習慣の改善により脂質の値が安定し、医師が安全と判断した場合には薬剤の減量や中止も可能です。ただし、遺伝的要因が強い場合や動脈硬化リスクが高い場合には長期的な薬物療法が必要になることがあります。
Q3. 食事制限はどの程度厳しくする必要がありますか?
A. 極端な食事制限は必要ありません。バランスの良い食事を心がけ、飽和脂肪酸を多く含む食品を控え、野菜や魚を積極的に摂取することが大切です。
Q4. 家族に脂質異常症の人がいる場合、遺伝しますか?
A. 脂質異常症には遺伝的要因が関与する場合があります。特に家族性高コレステロール血症は遺伝性が強く、若年での発症や重症化のリスクがあります。家族歴がある方は、定期的な検査と早めの生活習慣改善が重要です。
まとめ
脂質異常症は内科、循環器内科、内分泌代謝内科での受診が可能で、皆様の症状や合併症に応じて最適な診療科を選択することが大切です。
基本的にまずは一般内科でOKです。その上で、すでに心臓・脳血管の既往がある方、LDL 180 mg/dL以上が続く方や家族性高コレステロール血症が疑われる若年例は循環器内科、糖尿病や甲状腺疾患を合併する場合は内分泌代謝内科の並診が安心です。
自覚症状がなくても放置せず、早期の受診により将来の重大な合併症を予防できます。
治療は生活習慣改善と薬物療法を組み合わせて行い、定期的なフォローアップにより効果的な管理が可能です。医療機関選びでは専門性だけでなく、アクセスの良さや継続しやすさも重要な要素となります。
健康診断で脂質異常症を指摘された方は、まずは内科での相談から始めることをお勧めします。適切な診断と治療により、健康な生活を維持していきましょう。
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