橋本病(慢性甲状腺炎)を疑っている方、または顔つきの変化や体調不良が気になって当院を受診される方は少なくありません。橋本病は、甲状腺に慢性的な炎症を起こす自己免疫性の甲状腺疾患で、進行すると甲状腺機能低下症を来しやすい比較的身近な病気です。
当院にも、「最近顔がむくみやすくなった」「疲れやすくて体重も増えた」といった症状で来院される方が多くいらっしゃいます。しかし、これらの症状は橋本病以外の病気でも起こりうるため、医療機関で正確な診断を受けることが重要です。
この記事では、橋本病の診断・治療から、顔つきが変わる具体的なメカニズム、実際の診療現場での事例まで、皆様が安心して受診できるよう詳しく解説します。
橋本病で受診する際のポイント
橋本病も考慮されるような症状で医療機関を受診される場合、まずは内科を受診するのが良いでしょう。
他の疾患との鑑別もポイントとなりますので、適切な検査を受けていただくことが重要です。
受診時に以下のポイントを意識することで、より効率的な診断が期待できます。
- 症状の詳細(いつから、どのような症状があるか)をまとめておく
- 家族歴(甲状腺疾患、自己免疫疾患の既往)を確認しておく
- 現在服用中の薬剤リストを準備する
- 受診時に「甲状腺の検査を希望」と明確に伝える
橋本病の主な症状
橋本病で「顔つきが変わった」と感じる方は少なくありません。これは甲状腺機能低下症による複数の生理学的変化が組み合わさって起こる現象です。医学的なメカニズムを理解することで、症状への不安も軽減されるでしょう。
顔面のむくみ
橋本病による顔つきの変化で最も顕著なのが、顔面のむくみ(浮腫)です。甲状腺ホルモンが不足すると、全身の代謝が低下し、組織間に水分が貯留しやすくなります。特に顔面は重力の影響を受けにくい部位のため、むくみが目立ちやすい特徴があります。
当院では、橋本病の方から「朝起きたときの顔のむくみがひどい」「まぶたが重く感じる」といった訴えをよく伺います。このようなむくみは、適切な甲状腺ホルモン補充療法により改善が期待できます。
皮膚の変化と質感の異常
甲状腺機能低下症では、皮膚の新陳代謝も低下するため、皮膚乾燥や質感の変化が起こります。顔の皮膚が粗くなったり、化粧のりが悪くなったりすることも、顔つきの変化として感じられる要因の一つです。
また、皮膚の血行不良により顔色が悪く見えたり、表情筋の動きが鈍くなったりすることで、全体的に表情が乏しく見える場合もあります。
| 症状 | 発症メカニズム | 改善の可能性 |
|---|---|---|
| 顔面のむくみ | 代謝低下による水分貯留 | 治療により改善 |
| 皮膚乾燥 | 皮膚の新陳代謝低下 | 治療により改善 |
| 表情の変化 | 筋力低下・認知機能への影響 | 治療により改善 |
月経異常と体重増加
女性の場合、橋本病による甲状腺機能低下は月経異常を引き起こすことがあります。ホルモンバランスの変化により、顔つきにも微細な変化が現れる場合があります。
体重増加も橋本病の代表的な症状の一つで、顔周りにも脂肪がつきやすくなることで、顔つきの変化として認識されることがあります。これらの症状も、適切な治療により改善が期待できます。
認知機能低下と表情の変化
甲状腺ホルモンは脳機能にも重要な役割を果たすため、橋本病では軽度の認知機能低下が起こることがあります。集中力の低下や反応速度の鈍化により、表情が乏しくなったり、反応が遅くなったりすることも、顔つきの変化として感じられる要因です。
実際に診療する中でも、治療開始後に「表情が明るくなった」「生き生きとした表情に戻った」という変化を実感される方が多くいらっしゃいます。
橋本病の治療までの流れ
橋本病の診断には複数の検査を組み合わせる必要があります。適切な診断により、効果的な治療方針を立てることができるため、検査の流れと各検査の意義について詳しく解説します。
血液検査
橋本病の診断で最も重要なのがTSH、FT3、FT4値を測定する血液検査です。TSH(甲状腺刺激ホルモン)が高値を示し、FT4(遊離サイロキシン)が低値または正常下限を示す場合、甲状腺機能低下症が疑われます。
当院でも、甲状腺機能検査を実施する際は、これらの基本的な検査項目に加えて、必要に応じて自己抗体検査も同時に行います。検査結果は通常3〜5日程度で判明するため、比較的短期間で診断が可能です。
自己抗体検査
橋本病の確定診断には、甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)や甲状腺グロブリン抗体(TgAb)などの自己抗体検査が重要です。これらの抗体が陽性の場合、自己免疫性甲状腺炎(橋本病)の診断根拠となります。
ただし、抗体が陰性でも橋本病を否定できない場合があるため、総合的に判断することが重要です。
| 検査項目 | 正常値の目安 | 橋本病での変化 |
|---|---|---|
| TSH | 0.5~5.0 μIU/mL | 高値(5.0以上) |
| FT4 | 1.0~1.7 ng/dL | 低値または正常下限 |
| TPOAb | 16.0 IU/mL未満 | 高値(陽性) |
甲状腺超音波検査
甲状腺超音波検査は、甲状腺の形態変化を直接観察できる重要な検査です。橋本病では甲状腺の萎縮や慢性炎症による変化が特徴的なパターンを示すため、診断の確度を高める効果があります。
また、甲状腺がんなどの他の疾患との鑑別が必要な場合にも、重要な役割を果たします。
※当院では超音波検査を行っていませんので、検査が必要な方には状況に応じて近隣病院などに紹介させていただきます。
診断後の治療方針決定
橋本病と診断された後は、甲状腺機能の程度に応じて治療方針を決定します。軽度の機能低下の場合は定期的な経過観察を行い、明らかな機能低下がある場合はチラーヂンSなどの甲状腺ホルモン補充療法を開始します。
治療開始後も定期的な血液検査により甲状腺機能をモニタリングし、最適な薬剤量を調整することが重要です。適切な治療により多くの方が症状の改善を実感されています。
橋本病の診療事例
実際の診療現場での事例を通じて、橋本病の診断から治療までの流れをより具体的に理解していただけるよう、代表的なケースをご紹介します。これらの事例は、皆様の受診の参考になるでしょう。
顔のむくみと疲労感が主訴
40代の女性が「最近顔がむくみやすく、朝起きたときに特にひどい。疲れやすくて家事をするのもつらい」という症状で受診されました。初診時の症状は典型的な甲状腺機能低下症の症状でした。
血液検査の結果、TSH 12.5 μIU/mL(正常値の目安:0.5~5.0)、FT4 0.8 ng/dL(正常値の目安:1.0~1.7)と明らかな甲状腺機能低下を認めました。さらに、TPOAbが452 IU/mL(正常値の目安:16.0未満)と著明に高値を示し、橋本病による甲状腺機能低下症と診断しました。
チラーヂンS 25μgから治療を開始し、6週間後の再検査でTSH 8.2 μIU/mL、FT4 1.1 ng/dLとまだ改善の余地があったため、50μgに増量しました。治療開始3か月後には、むくみの改善と疲労感の軽減を実感され、「朝の顔のむくみがほとんど気にならなくなった」と喜ばれていました。
不妊治療中に発見されたケース
30代の女性が不妊治療のためのホルモン検査で軽度の甲状腺機能異常を指摘され、当院を紹介受診されました。自覚症状はほとんどありませんでしたが、「そういえば最近疲れやすい」という程度の症状でした。
検査結果では、TSH 7.8 μIU/mL、FT4 1.0 ng/dL、TPOAb 89 IU/mLという結果で、軽度の橋本病による甲状腺機能低下症と診断しました。妊娠を希望されていたため、多くの専門家が推奨している「TSH 2.5 μIU/mL未満」を目安として、チラーヂンSによる治療を開始しました。
この事例のように、橋本病は症状が軽微な場合も多く、他の疾患の検査で偶然発見されることがあります。妊娠を希望される女性では、より厳格な甲状腺機能管理が推奨されます。
うつ様症状から発見
50代の女性が「やる気が出ない、憂鬱な気分が続く」という症状で受診されました。当初はうつ病を疑いましたが、詳しく問診すると「体重が5kg増えた」「便秘がひどくなった」「寒がりになった」という身体症状も伴っていました。
甲状腺機能検査を実施したところ、TSH 15.2 μIU/mL、FT4 0.7 ng/dLと著明な機能低下を認め、橋本病の診断となりました。甲状腺機能低下症では、うつ様症状や認知機能の低下が起こることがあり、精神科疾患と間違われやすい特徴があります。
チラーヂンSによる治療開始後、4か月で甲状腺機能が正常化し、同時に精神症状も大幅に改善しました。このケースのように、一見精神的な症状に見えても、実は甲状腺機能異常が原因である場合があります。
治療における注意点と経過観察の重要性
これらの事例から分かるように、橋本病の治療では個々の方の症状や検査値に応じた適切な薬剤量の調整が重要です。治療開始後も定期的な血液検査による経過観察を継続し、最適な甲状腺機能を維持することが症状改善につながります。
当院では、治療開始後4〜6週間ごとに血液検査を実施し、各種検査値が安定した後は3~6か月ごとの定期検査を行っています。長期間の治療が必要な疾患ですが、適切な管理により通常の生活を送ることができます。
橋本病と他の甲状腺疾患との違い
橋本病は甲状腺疾患の一つですが、他の甲状腺疾患との鑑別診断が重要です。症状が類似していても治療法が大きく異なるため、正確な診断が不可欠です。代表的な甲状腺疾患との違いについて解説します。
バセドウ病との違い
バセドウ病は甲状腺機能亢進症を引き起こす自己免疫疾患で、橋本病とは正反対の症状を示します。バセドウ病では甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるため、動悸、発汗、体重減少、眼球突出などの症状が現れます。
「疲れやすい」という共通の症状から両疾患を鑑別する必要がある場合があります。血液検査により、TSH、FT3、FT4値の測定と特異的な自己抗体検査を行うことで確実な鑑別診断が可能です。
甲状腺がんとの違い
甲状腺の腫大やしこりを自覚した場合、甲状腺がんとの鑑別が重要になります。橋本病では甲状腺全体が腫大することが多いのに対し、甲状腺がんでは限局性の硬いしこりとして触れることが特徴的です。
超音波検査により甲状腺の内部構造を詳細に観察することで、両者の鑑別が可能です。また、必要に応じて細胞診検査が実施されることもあります。
| 疾患名 | 甲状腺機能 | 主な症状 | 特徴的な検査所見 |
|---|---|---|---|
| 橋本病 | 機能低下 | 疲労、むくみ、体重増加 | TSH高値、TPOAb陽性 |
| バセドウ病 | 機能亢進 | 動悸、発汗、体重減少 | TSH低値、TRAb陽性 |
| 甲状腺がん | 多くは正常 | 首のしこり、嚥下困難 | 超音波で限局性病変 |
合併症として注意すべき自己免疫疾患
橋本病は自己免疫疾患のため、他の自己免疫疾患を合併する可能性があります。代表的なものとして、シェーグレン症候群や関節リウマチ、1型糖尿病などがあります。
私たちの診療経験では、橋本病の方で「目や口が乾く」「関節が痛む」といった症状を訴える方には、これらの合併症の可能性を考慮した検査を実施します。早期発見・治療により、症状の進行を予防することができます。
妊娠・授乳期における特別な配慮
妊娠期間中は甲状腺ホルモンの必要量が増加するため、橋本病の方では特に注意深い管理が必要です。一般に、妊娠中は非妊娠時よりTSHを低めに保つことが推奨され、妊娠初期ではおおむね2.5~4.0 μIU/mL未満を目標とする指針が多くあります。特に甲状腺ホルモン補充療法中の方や不妊治療中の方では、TSH 2.5 μIU/mL未満を目標とすることもあり、個々の状況に応じて主治医が調整します。
授乳期においても、チラーヂンS(レボチロキシン)は母乳中への移行がごくわずかとされており、一般に安全に使用できる薬です。ただし、産後は甲状腺機能が変動しやすいため、定期的な甲状腺機能のモニタリングが重要です。当院では、妊娠を希望される方や妊娠中の方には、より頻回な検査と適切な薬剤調整を行っています。
よくある質問と回答
橋本病について皆様から寄せられるよくある質問と、その回答をまとめました。不安や疑問の解消に役立てていただければと思います。
Q1. 橋本病は完治するのでしょうか?
A. 橋本病は自己免疫疾患のため、現時点では免疫の異常そのものを完全に治す薬はありませんが、甲状腺ホルモン補充療法により症状を十分コントロールし、通常と変わらない生活を送ることは可能です。多くの方が治療により通常の生活を送られています。
Q2. 薬は一生飲み続ける必要がありますか?
A. 多くの場合、長期間の服薬が必要になります。ただし、軽症の場合や一時的な機能低下の場合は、経過観察のみで改善することもあります。定期的な検査により甲状腺機能を評価し、薬剤の必要性を判断します。自己判断での服薬中止は症状の悪化につながるため避けてください。
Q3. 橋本病は遺伝しますか?
A. 橋本病には遺伝的素因が関与していると考えられていますが、必ず遺伝するわけではありません。家族歴がある場合は発症リスクがやや高くなりますが、環境要因も発症に影響するため、家族歴があっても必ず発症するとは限りません。
Q4. 食事で気をつけることはありますか?
A. 特別な食事制限は必要ありませんが、ヨウ素の過剰摂取は甲状腺機能に影響する可能性があるため注意が必要です。昆布やわかめなどの海藻類の極端な摂取は控え、バランスの良い食事を心がけてください。薬剤服用時は、コーヒーや牛乳との同時摂取は避けることが推奨されます。
Q5. 橋本病があっても妊娠・出産は可能ですか?
A. 適切な治療により甲状腺機能を正常に保てば、妊娠・出産は十分可能です。ただし、妊娠中は胎児の発育のためにより厳格な甲状腺機能管理が必要になります。妊娠を希望される場合は、事前に主治医と相談し、適切な準備を行うことが大切です。
- 妊娠前からTSHを低め(例:2.5 μIU/mL未満)に調整することを主治医と相談
- 妊娠中の定期的な甲状腺機能検査
- 必要に応じた薬剤量の調整
Q6. 治療開始後、どのくらいで症状は改善しますか?
A. 個人差がありますが、多くの方で治療開始後6~12週間程度で症状の改善を実感されます。疲労感やむくみなどの症状は比較的早期に改善することが多く、体重や皮膚の変化はやや時間がかかる傾向があります。症状の改善が見られない場合は、薬剤量の調整や他の疾患の合併の可能性を検討します。
まとめ
橋本病は、適切な医療機関での早期受診が重要です。顔つきの変化は甲状腺機能低下によるむくみや皮膚の変化が主な原因で、適切な治療により改善が期待できます。
血液検査での甲状腺機能評価と自己抗体検査などにより診断が可能で、チラーヂンSによる甲状腺ホルモン補充療法により多くの方が症状の改善を実感されています。当院での実例からも分かるように、個々の症状に応じた適切な治療により、正常な生活を送ることができる疾患です。
気になる症状がある方は、まず「甲状腺の検査を希望します」と明確に伝えて内科を受診することをお勧めします。早期診断・治療により、より良い生活の質を維持することができるでしょう。
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