健康診断で「脂質異常症」や「コレステロールが高い」と指摘され、不安を感じていませんか。脂質異常症は成人の約4人に1人が該当するといわれ、日本人にとって非常に身近な疾患です。
「一度診断されたらもう治らないのでは」「原因がわからず何から改善すればいいかわからない」という声をよく耳にします。しかし、脂質異常症は原因を正しく理解し適切な治療と生活習慣の見直しを行うことで、十分に改善が期待できる疾患です。
本記事では、脂質異常症の定義から原因、症状、治療法まで実例を交えながら徹底的に解説します。健康診断の結果の見方や、今日からできる予防・改善策もご紹介しますのでぜひ最後までご覧ください。
脂質異常症とは何か
脂質異常症とは、血液中の脂質(コレステロールや中性脂肪)のバランスが崩れた状態を指します。以前は「高脂血症」と呼ばれていましたが、現在では診断基準の変更に伴い「脂質異常症」という名称が使われています。
脂質は本来、細胞膜やホルモンの必須成分です。しかし、血液中の濃度が高すぎたり低すぎたりすると、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞などの重大な合併症を引き起こすリスクが高まります。
| 診断基準 | 数値 | 分類名 |
|---|---|---|
| LDLコレステロール | 140mg/dL以上 | 高LDLコレステロール血症 |
| HDLコレステロール | 40mg/dL未満 | 低HDLコレステロール血症 |
| 中性脂肪(トリグリセライド) | 150mg/dL以上 | 高トリグリセライド血症 |
コレステロールの役割と種類
コレステロールには善玉(HDL)と悪玉(LDL)の2種類があります。HDLコレステロールは「善玉」、LDLコレステロールは「悪玉」と呼ばれています。
ただし、LDLコレステロールも適正量であれば身体に必要な成分です。問題となるのは、血液中の濃度が過剰になった場合や、HDLコレステロールが不足してバランスが崩れた場合です。健康診断の結果を持参される方には、この2つのコレステロールのバランスが重要であることを丁寧にお伝えしています。
中性脂肪の働き
中性脂肪はエネルギー源として重要な役割を果たします。食事から摂取した糖質や脂質は肝臓で中性脂肪に変換され、必要に応じて全身に運ばれます。しかし過剰な糖質や脂質の摂取、運動不足などが続くと中性脂肪が血液中に蓄積し、動脈硬化の原因となります。
中性脂肪が高値の方に対して食生活の聞き取りを行うと、甘い飲み物や果物の過剰摂取、アルコールの習慣的な飲酒などが関与している場合が非常に多いです。
脂質異常症と高脂血症の違い
以前は「高脂血症」という病名が使われていましたが、2007年以降、日本動脈硬化学会の診断基準改訂に伴い「脂質異常症」という名称に変更されました。
高脂血症という名称では、脂質が「高い」ことだけが問題のように聞こえますが、実際にはHDLコレステロールが「低い」場合にも治療が必要です。そのため、脂質のバランスが「異常」である状態を包括的に表現する名称として、脂質異常症が採用されました。
脂質異常症の主な原因
脂質異常症の原因は一つではなく、生活習慣、遺伝、基礎疾患、薬剤など複数の要因が絡み合って発症します。ここでは、それぞれの原因について詳しく解説します。
実際には単一の原因ではなく、複数の要因が重なっている方が大半です。そのため原因を一つひとつ丁寧に見極め、個別の対策を立てることが重要になります。
| 原因の分類 | 主な要因 | 関与する脂質 |
|---|---|---|
| 生活習慣 | 食生活の乱れ、運動不足、飲酒、喫煙 | LDL、中性脂肪 |
| 遺伝 | 家族性高コレステロール血症 | 主にLDL |
| 基礎疾患 | 糖尿病、甲状腺機能低下症、腎疾患 | LDL、中性脂肪、HDL |
| 薬剤 | ステロイド、利尿薬など | LDL、中性脂肪 |
食生活の乱れ
飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の過剰摂取は、LDLコレステロールを上昇させる最大の要因です。バター、ラード、生クリーム、肉の脂身、加工肉などに多く含まれる飽和脂肪酸は、肝臓でのLDLコレステロール産生を促進します。また、マーガリンや菓子パン、揚げ物などに含まれるトランス脂肪酸も同様の作用があります。
一方、糖質の過剰摂取は中性脂肪の上昇を招きます。特に、砂糖入りの清涼飲料水、果糖を多く含む果物ジュース、甘いお菓子、白米や麺類などの精製された炭水化物は、血糖値を急上昇させ、余った糖質が中性脂肪に変換されます。健康診断で中性脂肪が高値だった方に食生活を伺うと、缶コーヒーやエナジードリンクを毎日複数本飲んでいる方が少なくありません。
運動不足
運動不足は善玉コレステロール(HDL)の低下と中性脂肪の上昇につながります。有酸素運動は、筋肉での脂質代謝を活性化し、HDLコレステロールを増加させる効果があります。反対に、座りっぱなしの生活や身体活動の少ない生活習慣は、脂質代謝を低下させます。
デスクワーク中心の現代社会では運動不足に陥りやすい環境です。私たちのクリニックでは、まずは通勤時に一駅分歩く、エレベーターではなく階段を使うなど、日常生活に取り入れやすい工夫をお勧めしています。
飲酒と喫煙
アルコールの過剰摂取は中性脂肪を著しく上昇させます。アルコールは肝臓で中性脂肪の合成を促進するため、習慣的な飲酒は脂質異常症の大きなリスク因子です。特に、ビールや日本酒など糖質を含むお酒は、中性脂肪をさらに増加させます。
喫煙はHDLコレステロールを低下させ、LDLコレステロールを酸化させて動脈硬化を促進します。喫煙習慣がある方は、脂質異常症だけでなく、心筋梗塞や脳梗塞のリスクも大幅に上昇するため、禁煙が強く推奨されます。
遺伝的要因
家族性高コレステロール血症は、遺伝的にLDLコレステロールが高くなる疾患です。日本人の約200〜500人に1人が該当するとされます。生まれつきLDL受容体の機能が低下しているため、LDLコレステロールが血液中に蓄積します。
この疾患の特徴は、若年期からDLコレステロールが著しく高く、生活習慣の改善だけでは十分な効果が得られない点です。家族歴に心筋梗塞や脳梗塞が多い場合、遺伝性の脂質異常症を疑う必要があります。当院でも、30代の方がLDLコレステロール200mg/dL以上で来院され、詳しく聞くと父親が40代で心筋梗塞を発症していたという事例がありました。早期発見と専門的な治療が非常に重要です。
基礎疾患の影響
糖尿病、甲状腺機能低下症、腎疾患などの基礎疾患は、脂質代謝に大きく影響します。糖尿病では、インスリン作用の低下により中性脂肪が上昇し、HDLコレステロールが低下します。甲状腺機能低下症では、代謝全体が低下するため、LDLコレステロールが上昇します。
慢性腎臓病では、腎機能の低下に伴い脂質代謝も悪化し、中性脂肪やLDLコレステロールが上昇します。これらの基礎疾患がある場合は、脂質異常症の治療と並行して、基礎疾患そのものの治療が不可欠です。
脂質異常症の症状とリスク
脂質異常症の最大の特徴は、初期には自覚症状がほとんどないことです。そのため、健康診断で初めて指摘されるケースが大半であり、症状がないため放置されがちです。
しかし、無症状のまま進行すると動脈硬化が徐々に進み、ある日突然、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる合併症を引き起こします。ここでは、脂質異常症が引き起こす合併症リスクについて詳しく解説します。
| 合併症 | 発症メカニズム | 主な症状 |
|---|---|---|
| 動脈硬化 | 血管壁へのコレステロール蓄積 | 初期は無症状、進行すると狭心症など |
| 心筋梗塞 | 冠動脈の閉塞 | 胸痛、呼吸困難、冷や汗 |
| 脳梗塞 | 脳血管の閉塞 | 麻痺、言語障害、意識障害 |
| 慢性腎臓病 | 腎血管の動脈硬化 | むくみ、倦怠感、尿の異常 |
動脈硬化のメカニズム
動脈硬化は、血管壁にLDLコレステロールが沈着し、血管が硬く狭くなる病態です。血管壁に入り込んだLDLコレステロールは酸化され、白血球の一種であるマクロファージに取り込まれます。このマクロファージが蓄積することでプラークと呼ばれる塊が形成され、血管が狭くなります。
さらにプラークが破れると血栓が形成され、血管が完全に詰まることで心筋梗塞や脳梗塞を引き起こします。この過程は数年から数十年かけてゆっくり進行するため、症状が出た時にはすでに重篤な状態になっていることが多いのです。
心筋梗塞のリスク
心筋梗塞は、冠動脈が閉塞して心臓の筋肉に血液が届かなくなる病態です。LDLコレステロールが高値の状態が続くと、冠動脈にプラークが形成され、突然の胸痛や呼吸困難を引き起こします。日本では年間約10万人が心筋梗塞を発症し、約3割が亡くなるとされています。
LDLコレステロールが高く、さらに喫煙習慣や糖尿病、高血圧を合併している方には心筋梗塞のリスクが非常に高いことを丁寧に説明し、早期の治療開始を強くお勧めしています。
脳梗塞のリスク
脳梗塞は、脳血管が閉塞して脳組織に血液が届かなくなる病態です。高LDLコレステロール血症や低HDLコレステロール血症は、脳動脈硬化を進行させ、脳梗塞のリスクを高めます。特に、中性脂肪が高値で小型のLDLコレステロールが増加している場合、脳梗塞のリスクがさらに上昇します。
脳梗塞を発症すると、片麻痺や言語障害、嚥下障害などの後遺症が残ることが多く、日常生活に大きな支障をきたします。脂質異常症の治療は、こうした重篤な合併症を予防するための重要な手段です。
慢性腎臓病との関連
脂質異常症は腎臓の血管にも動脈硬化を引き起こし、慢性腎臓病の進行を早めます。腎機能が低下すると、老廃物の排泄が不十分になり、むくみや倦怠感、貧血などの症状が現れます。さらに、腎機能の低下は心血管疾患のリスクも高めるため、悪循環に陥ります。
糖尿病や高血圧を合併している方は、特に腎臓への負担が大きいため、脂質異常症の治療と並行して、定期的な腎機能の検査が必要です。
脂質異常症の診断方法と健康診断の見方
脂質異常症の診断は、血液検査による脂質の測定で行います。健康診断や人間ドックで測定される脂質項目には、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪、総コレステロールなどがあります。
ここでは健康診断の結果の見方と、診断基準について詳しく解説します。健康診断の結果を正しく理解することで、早期発見と適切な対応が可能になります。
| 検査項目 | 基準範囲 | 異常値の意味 |
|---|---|---|
| LDLコレステロール | 60〜119mg/dL | 140mg/dL以上で治療対象 |
| HDLコレステロール | 40mg/dL以上 | 40mg/dL未満で治療対象 |
| 中性脂肪 | 30〜149mg/dL | 150mg/dL以上で治療対象 |
| 総コレステロール | 120〜219mg/dL | 220mg/dL以上で注意 |
LDLコレステロールの見方
LDLコレステロールは、動脈硬化の最も重要な指標です。基準値は60〜119mg/dLであり、140mg/dL以上で治療対象となります。ただし、糖尿病や心筋梗塞の既往がある方は、より厳格な管理が求められます。特に家族歴やその他のリスク因子がある場合は、早期からの対策が重要です。
HDLコレステロールの見方
HDLコレステロールは、高いほど動脈硬化のリスクが低くなります。基準値は40mg/dL以上であり、これを下回ると治療対象となります。HDLコレステロールは、運動習慣や適正体重の維持、禁煙によって増加させることができます。
逆に、運動不足や肥満、喫煙習慣がある方は、HDLコレステロールが低下しやすい傾向があります。当院では、HDLコレステロールが低値の方に対して、まずは運動習慣の確立を最優先にお勧めしています。
中性脂肪の見方
中性脂肪は、食事の影響を強く受けるため、検査前日の食事内容に注意が必要です。基準値は30〜149mg/dLであり、150mg/dL以上で治療対象となります。中性脂肪が高値の場合、食生活の見直しと適度な運動が最も効果的です。
特に、アルコールの摂取量を減らすことや、糖質の過剰摂取を避けることで、中性脂肪は短期間で改善することが多いです。中性脂肪が300mg/dL以上の高値の方に対しては、急性膵炎のリスクもあるため、早急な治療介入をお勧めしています。
総コレステロールの意味
総コレステロールは、LDLコレステロール、HDLコレステロール、その他の脂質を合計した値です。基準値は120〜219mg/dLですが、総コレステロール単独では脂質異常症の診断はできません。重要なのは、LDLとHDLのバランスです。
例えば、総コレステロールが高くてもHDLコレステロールが非常に高ければ、動脈硬化のリスクは低い場合があります。逆に、総コレステロールが正常範囲でもLDLが高くHDLが低い場合は、リスクが高いと判断されます。
日常生活でできる脂質異常症の予防・改善策
脂質異常症の予防と改善には、生活習慣の見直しが最も重要です。食事、運動、禁煙、節酒といった日常生活の改善により、多くの方で脂質の数値が改善します。
ここでは、今日から実践できる予防・改善策(食事・運動)を解説します。
食事療法の基本
食事療法の基本は、飽和脂肪酸と糖質を控え、不飽和脂肪酸と食物繊維を積極的に摂取することです。飽和脂肪酸は肉の脂身、バター、生クリームなどに多く含まれ、LDLコレステロールを上昇させます。一方、青魚に含まれるEPAやDHA、オリーブオイルに含まれるオレイン酸などの不飽和脂肪酸は、LDLコレステロールを低下させる効果があります。
食物繊維はコレステロールの吸収を抑制し、便とともに排泄を促進します。野菜、きのこ、海藻、大豆製品などに豊富に含まれています。当院では、1日350gの野菜摂取を目標にすることをお勧めしています。
| 食品カテゴリ | 積極的に摂りたい食品 | 控えたい食品 |
|---|---|---|
| 脂質 | 青魚、オリーブオイル、ナッツ類 | 肉の脂身、バター、マーガリン |
| 炭水化物 | 玄米、全粒粉パン、オートミール | 白米、菓子パン、清涼飲料水 |
| たんぱく質 | 大豆製品、鶏ささみ、白身魚 | 加工肉、脂身の多い肉 |
| その他 | 野菜、きのこ、海藻 | 揚げ物、スナック菓子 |
運動習慣の確立
有酸素運動は、HDLコレステロールの増加と中性脂肪の低下に非常に効果的です。ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなどの有酸素運動を、1日30分以上、週5日以上行うことが推奨されています。運動強度は「軽く息が上がる程度」を目安にしてください。
運動習慣がない方は、まずは1日10分のウォーキングから始め、徐々に時間を延ばしましょう。通勤時に一駅分歩く、エレベーターではなく階段を使う、買い物を徒歩で行くなど、日常生活に運動を取り入れる工夫が大切です。当院では、無理なく続けられる運動習慣の確立を重視し、個別にアドバイスしています。
禁煙と節酒
喫煙はHDLコレステロールを低下させ動脈硬化を促進するため、禁煙は脂質異常症の治療において極めて重要です。禁煙外来の活用や、ニコチン置換療法などを利用することで禁煙成功率が高まります。
アルコールは、適量であればHDLコレステロールを増加させる効果がありますが、過剰摂取は中性脂肪を著しく上昇させます。適量は、1日あたりビール中瓶1本、日本酒1合、ワイングラス2杯程度です。週に2日以上の休肝日を設けることも重要です。
体重管理とストレス対策
肥満は脂質異常症の大きなリスク因子であり、適正体重の維持が重要です。BMI(体格指数)が25以上の方は、減量によって脂質の数値が改善する可能性が高いです。3〜6か月で現在体重の5〜10%減を目標にしましょう。
ストレスも脂質代謝に悪影響を及ぼします。ストレスが続くと、コルチゾールなどのホルモンが分泌され、血糖値や脂質が上昇します。十分な睡眠、リラクゼーション、趣味の時間を持つことで、ストレスを適切にコントロールすることが大切です。
【実例】生活習慣改善で脂質異常症が改善したケース
ここでは、私たちのクリニックで実際に生活習慣の改善により脂質異常症が改善した事例をご紹介します。
40代男性のケース
40代の男性が、職場の健康診断でLDLコレステロール160mg/dL、中性脂肪250mg/dLと指摘され、当院を受診されました。詳しく問診すると、仕事が忙しく外食が多く、特に揚げ物や丼物を好んで食べていること、運動習慣が全くないこと、毎晩ビールを2〜3本飲むことが判明しました。
まずは食事内容の見直しから始めました。昼食は定食スタイルで野菜を多く摂る、夕食は魚中心にする、ビールは1日1本までに減らす、休肝日を週2日設けるという目標を立てました。運動については、通勤時に一駅分歩くことと、週末に30分のウォーキングを行うことを提案しました。
3か月後の再検査では、LDLコレステロール130mg/dL、中性脂肪150mg/dLまで改善しました。生活習慣の見直しだけで、薬を使わずに数値が改善した症例です。ご本人も「体が軽くなり体調が良くなった」と喜ばれていました。
50代女性のケース
50代の女性が、更年期以降にLDLコレステロールが上昇し、健康診断で180mg/dLと指摘され受診されました。閉経後は女性ホルモンの低下により、LDLコレステロールが上昇しやすくなります。問診では、甘い物が好きで毎日お菓子を食べる習慣があること、運動習慣がないことがわかりました。
食事面では、間食を果物やナッツに変更し、お菓子を週2回までに制限することを提案しました。また、朝食に大豆製品を取り入れ、夕食は野菜を中心とした和食にすることをお勧めしました。運動面では、毎日30分、近所を歩くことを目標にしました。
3か月後の再検査ではLDLコレステロール150mg/dLまで改善しましたが、目標値には達していなかったため、さらに3か月継続しました。半年後にはLDLコレステロール135mg/dLまで低下し、継続的な生活習慣の改善が効果を上げた事例です。
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薬物療法が必要なケースと治療の選択
生活習慣の改善だけでは脂質の数値が十分に改善しない場合や、リスクが高い場合には、薬物療法が必要になります。ここでは薬物療法の適応基準と、主な治療薬について解説します。
| 薬剤の種類 | 主な作用 | 適応 |
|---|---|---|
| スタチン | 肝臓でのコレステロール合成を抑制 | 高LDLコレステロール血症 |
| フィブラート | 中性脂肪の分解を促進 | 高トリグリセライド血症 |
| EPA製剤 | 中性脂肪低下、動脈硬化抑制 | 高トリグリセライド血症 |
| 小腸コレステロールトランスポーター阻害薬 | 小腸でのコレステロール吸収を抑制 | 高LDLコレステロール血症 |
薬物療法が必要になる基準
薬物療法の開始基準は、脂質の数値だけでなく、他のリスク因子を総合的に評価して決定されます。日本動脈硬化学会のガイドラインでは、糖尿病、慢性腎臓病、心筋梗塞や脳梗塞の既往、家族性高コレステロール血症などがある場合、より厳密なLDLコレステロールのコントロールが推奨されています。
一方、これらのリスク因子がない場合でも、LDLコレステロールが180mg/dL以上の場合は、生活習慣の改善と並行して薬物療法を開始することが多いです。当院では、個別のリスク評価を行い、薬物療法の必要性について丁寧に説明しています。
スタチンの効果と副作用
スタチンは、LDLコレステロールを低下させる最も効果的な薬剤です。肝臓でのコレステロール合成を抑制し、LDLコレステロールを20〜50%低下させることができます。心筋梗塞や脳梗塞の予防効果も証明されており、広く使用されています。
副作用としては筋肉痛や肝機能障害が報告されていますが、発生頻度は低く、定期的な血液検査を行うことで安全に使用できます。当院でスタチンを開始する際には、副作用の説明と定期的な検査の重要性をお伝えしています。
フィブラートとEPA製剤
フィブラートは、中性脂肪を低下させる効果が高い薬剤です。中性脂肪が300mg/dL以上の高値の場合や、生活習慣の改善だけでは十分に低下しない場合に使用されます。ただし、腎機能が低下している方では注意が必要です。
EPA製剤は、青魚に含まれるEPAを主成分とし、中性脂肪を下げるだけでなく動脈硬化の進行抑制も期待されます。副作用が少なく安全性が高いため、幅広く使用されています。
薬物療法と生活習慣改善の併用
薬物療法を開始しても、生活習慣の改善は継続することが重要です。薬だけに頼るのではなく、食事や運動、禁煙などの生活習慣の見直しを並行すると、より良好な治療効果が得られます。また、生活習慣が改善すれば、薬の減量や中止が可能になる場合もあります。
当院では、薬物療法を開始する際にも、生活習慣指導を継続し、定期的に数値を確認しながら、必要に応じて治療方針を調整しています。
家族性高コレステロール血症と遺伝的リスク
家族性高コレステロール血症は、生まれつきLDLコレステロールが高値になる遺伝性の疾患です。生活習慣の改善だけでは十分な効果が得られないため、早期発見と専門的な治療が不可欠です。
ここでは家族性高コレステロール血症の特徴と、遺伝的リスクがある場合の対応について解説します。
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 発症頻度 | 約200〜500人に1人 |
| 遺伝形式 | 常染色体優性遺伝 |
| LDLコレステロール値 | 180mg/dL以上(未治療時) |
| 合併症リスク | 若年での心筋梗塞、アキレス腱肥厚 |
家族性高コレステロール血症の診断
家族性高コレステロール血症の診断は、血液検査と家族歴、身体所見を総合的に評価して行われます。診断基準には、LDLコレステロールが180mg/dL以上であること、親や兄弟姉妹に心筋梗塞や脳梗塞の家族歴があること、アキレス腱肥厚などの身体所見があることが含まれます。
早期治療の重要性
家族性高コレステロール血症では、若年から動脈硬化が進行するため、早期発見と早期治療が極めて重要です。未治療の場合、男性では40代、女性では50代で心筋梗塞を発症するリスクが高まります。
治療の中心は強力なスタチンによる薬物療法です。生活習慣の改善も並行して行いますが、薬物療法なしでは十分な効果が得られません。小児期から治療を開始することで、将来の心血管疾患のリスクを大幅に減らすことができます。
家族歴がある場合の対応
親や兄弟姉妹に心筋梗塞や脳梗塞の家族歴がある場合、早期のスクリーニングが推奨されます。特に、家族が若年で心血管疾患を発症している場合は、遺伝性の脂質異常症の可能性が高いため、医療機関への相談が必要です。
当院では家族歴がある方に対しては、定期的な血液検査と、必要に応じて専門医療機関への紹介を行っています。早期発見により、将来の重篤な合併症を予防することができます。
よくある質問と回答
ここでは、脂質異常症に関して多く寄せられる質問とその回答をご紹介します。皆様の疑問や不安を解消する一助となれば幸いです。
脂質異常症は治らない病気ですか?
脂質異常症は、生活習慣の改善や適切な治療により、多くの方で改善が可能です。特に、生活習慣が原因の場合、食事や運動の見直しにより薬を使わずに正常値に戻ることもあります。ただし、遺伝性の場合は完治は難しく、継続的な治療が必要です。
重要なのは、「治らない」と諦めるのではなく、日々の生活習慣を見直し、定期的に検査を受けながら、長期的に管理していく姿勢です。当院では、一人ひとりの状態に応じた治療プランを提案し、継続的なサポートを行っています。
痩せていても脂質異常症になることはありますか?
体重が標準範囲でも、脂質異常症になることは十分にあります。特に、運動不足や食事内容の偏り、遺伝的要因がある場合、体型に関係なく脂質異常症を発症します。また、内臓脂肪が蓄積している「隠れ肥満」の方も注意が必要です。
「痩せているから安心」という誤解は危険です。体型に関わらず、定期的な健康診断で脂質の値を確認し、異常があれば早期に対応することが重要です。
薬を飲み始めたら一生続けなければなりませんか?
薬物療法は、生活習慣の改善と並行して行うことで、将来的に減量や中止が可能な場合もあります。ただし、遺伝性の脂質異常症や、リスクが高い場合は、長期的な服薬が必要です。
薬を始めても、食事や運動の改善を継続し、定期的に検査を受けながら、医師と相談して治療方針を見直すことが大切です。自己判断で服薬を中断すると、再び数値が悪化するリスクがあるため、必ず医師に相談してください。
コレステロールの高い食品を避けると改善しますか?
食事中のコレステロールよりも、飽和脂肪酸や糖質の摂取量がLDLコレステロールや中性脂肪に大きく影響します。卵やイカなどコレステロールを多く含む食品を極端に避ける必要はなく、むしろ肉の脂身やバター、糖質の過剰摂取を控えることが重要です。
バランスの取れた食事を心がけ、野菜や魚を中心とした食生活にすることで、脂質の数値は改善します。当院では、栄養バランスを考慮した具体的な食事指導を行っています。
若い人でも脂質異常症になりますか?
若年でも脂質異常症は発症し、特に遺伝性の場合は若いうちから動脈硬化が進行します。また、生活習慣の乱れにより、20代や30代でも脂質異常症を発症する方が増えています。
若いからといって油断せず、定期的な健康診断を受け、異常があれば早期に対応することが、将来の心筋梗塞や脳梗塞の予防につながります。
まとめ
脂質異常症は、成人の約4人に1人が該当する身近な疾患です。自覚症状がないまま進行するため、健康診断での早期発見が重要です。原因は生活習慣、遺伝、基礎疾患など多岐にわたり、それぞれに応じた対策が必要です。
生活習慣の改善、特に食事と運動の見直しにより、多くの方で脂質の数値は改善します。「一度診断されたら治らない」という誤解を持たず、日々の生活を見直し、定期的に検査を受けながら、長期的に管理していくことが大切です。
遺伝性の脂質異常症やリスクが高い場合は、薬物療法が必要になりますが、生活習慣の改善と並行して行うことで、より良好な治療効果が得られます。脂質異常症は適切に管理することで、心筋梗塞や脳梗塞といった重篤な合併症を予防できる疾患です。健康診断で異常を指摘された方は、早めに医療機関を受診し、自分に合った治療プランを立てましょう。
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